原発関連も何冊か読みましたが、この本もなかなか示唆に富んでおりました。
メルケルという政治家の政治姿勢からすると、タイトルは「なぜメルケルは(ドイツ国民に)『転向』させられたのか」の方が内容にあっているかも。
日本人とドイツ人の「リスク」に対する考え方、思想の違いを、ドイツが含まれるヨーロッパ大陸における三十年戦争やペストの災禍にまで溯って説いている所が非常にわかりやすいです。
そういった歴史的背景により、とにかく「不安でたまらない」のがドイツ人の国民性だとのこと。
ドイツが「原発全廃」を選択したのも、その歴史や国民性に対する理解なくしては理解できないということがよくわかります。
逆に言うと、ドイツの「原発全廃」を直ちに日本に当てはめるということもまた困難であるということです。
ドイツにおいても、代替エネルギーを確保するまでの間、近隣のフランスやチェコから「原発」で生み出された電力を輸入(陸続きだから可能なのだが)せざるを得ないという「矛盾」を抱えていることについてもしっかり述べられています。産業界はやはりメルケルのエネルギー政策転換には反対の姿勢であります。
総じて「ドイツ社会論」というべき本ですが、日本を「客観視」する意味でも、参考になる著書です。
著者の熊谷氏は元NHK記者のフリージャーナリスト。ドイツ在住20年という、現地の立場をしっかり捉えた記述は説得力があります。加えて、事象を冷静かつ客観的に分析されているところも読んでいて安心できる部分であります。
ぜひ皆様、ご一読を